OpenRouter
OpenRouterは、多数のモデルとプロバイダを1本のAPIキーとOpenAI互換の窓口にまとめる中継サービスです。当サイトはローカル実行を前提にしていますが、これは「そもそも借りたほうが良いのでは」という最有力の対抗馬なので、正面から比べます。先に結論を書くと、分かれ目は使用時間ではなく「機材を新しく買うかどうか」です。
料金の仕組み
推論の単価に上乗せはありません。各プロバイダの価格がそのまま通ります。手数料が乗るのはクレジットを購入するときで、Stripe決済で5.5%(最低$0.80)、暗号通貨(USDC)で5%です。最低額があるため、少額を頻繁にチャージするほど実効負担率は上がります。自分のAPIキーを持ち込む場合(BYOK)は月100万リクエストまで無料、以降5%。無料枠のモデルもありますが、1日50リクエスト(クレジットを$10以上購入すると1日1000)という制限があり、公式にも本番用途には向かないとされています。なお課金単位はテキストのトークンだけでなく、モデルによってリクエスト単位・画像・reasoningトークンなどが別に加算されます。
「何時間使うか」で比べると間違える
よくある比較の仕方は「月◯時間使うといくら」ですが、これでは判断できません。電気代もAPI料金も使った分に比例して増えるので、時間を増やしても大小関係は入れ替わらないからです。片方が安ければ、何時間使ってもそちらが安いままです。
さらに厄介なのは、同じ「1時間」でも中身が違うことです。人がチャットで読んだり打ったりしている間、GPUはほとんど遊んでいます。一方でAPI側は実際に流したトークンにしか課金されません。つまり「対話1時間」を突き合わせると、ローカル側だけ待ち時間ぶんの電力を計上することになり、比較が歪みます。
正しい共通の単位はトークンです。
トークンあたりで比べる
ローカル側は実測のスループット(llama.cpp公式の計測表)と当サイトの電力モデル(TDPの70%+システム80W、31円/kWh)から、出力100万トークンを生成するのにかかる電気代を出せます。
| 方式 | 出力100万トークンあたり |
|---|---|
| ローカル: RTX 4090(実測186.21トークン/秒) | 約18.2円 |
| ローカル: RTX 3090(実測158.16トークン/秒) | 約17.7円 |
| API: 仮定出力単価 $0.5 | 75円 |
| API: 仮定出力単価 $1.2 | 180円 |
| API: 仮定出力単価 $3.0 | 450円 |
API側の単価は実価格ではなく比較用に置いた仮定値です(モデルとプロバイダで大きく変わります)。またこの表はテキスト推論のクレジット消費額のみで、クレジット購入手数料・画像・ツール利用・Web検索などの料金を含みません。為替は150円/$換算。
すでにGPUを持っているなら、電気代は仮定したどのAPI単価より安くなります。 生成そのものにかかる電力は、100万トークンで20円に届きません。ここだけ見ればローカルの圧勝です。
本当の分かれ目は「買うかどうか」
問題は機材代です。電気代は使った分だけですが、購入費は使わなくてもかかります。 中古のRTX 3090を10万円で買い、3年後に4万円で売れると仮定すると、月あたりの負担は約1,667円。これを仮定したAPI単価との差で埋めるには、次の量を毎月生成する必要があります。
| 仮定API出力単価 | 損益分岐 | 連続生成に換算すると |
|---|---|---|
| $0.5 / 100万トークン | 月2,910万トークン | 約51時間 |
| $1.2 / 100万トークン | 月1,030万トークン | 約18時間 |
| $3.0 / 100万トークン | 月390万トークン | 約7時間 |
つまり、安いAPIで済む用途のために機材を新しく買うのは、コスト面では割に合いません(月51時間ぶっ通しで生成し続けて、ようやく中古3090の元が取れる計算です)。逆に高単価のモデルを常用するなら、月7時間ぶんの生成で分岐します。すでにGPUを持っている人にとっては、そもそもこの表は関係ありません — 電気代しかかからないからです。
コスト以外の判断材料
金額で決まらない部分にこそ、選択の実質があります。
- データが外に出ないこと。 OpenRouterは第三者のプロバイダを経由します。学習に使うプロバイダへのルーティングを止める設定、データ保持ポリシーによるプロバイダの絞り込み、企業向けのEU域内ルーティングが用意されており、要件を満たせば外部APIを使える場合もあります。ただし医療・法務・金融のように、組織の規程・契約・法的要件によってはここが最優先の選定条件になり得ます(分野別の考え方)。
- 従量課金を気にせず試せること。 手元で動いていれば、何度投げ直しても請求は増えません。試行回数を気にしなくてよいという効果は、実作業では小さくありません。
- ネットワークに依存しないこと。 オフラインでも、相手のサービスが落ちていても動きます。
API・クラウドGPU・ローカルの使い分け
- API(OpenRouter等) — 導入が最も簡単で、運用の手間がありません。使った分だけ払えます。一方で、使えるモデルと設定の自由度は提供されている範囲に限られます。
- クラウドGPU(時間貸し) — 任意のモデルを載せられ、追加学習やバッチ処理にも向きます。ただし起動している時間・ストレージ・環境構築の手間も課金対象です。クラウドGPUという選択肢で詳しく説明しています。
- ローカル — 初期費用と管理の手間を引き受ける代わりに、オフライン性と継続的な制御が手に入ります。生成そのものの限界コストは最も低くなります。
当サイトの判定との関係
当サイトが出す◎△×は「手元のハードで動くか」であって、「ローカルで動かすべきか」ではありません。×が出たモデルをまずAPIで試して、常用すると決まってから機材を検討する——という順序は合理的です。
関連用語
- ローカルLLMとは — 自分のPCやスマホの中で動かす大規模言語モデル。会話が外部に送信されない
- RAG(検索拡張生成) — モデルに手元の最新文書を参照させる仕組み。ファインチューンなしで知識を足せる
- ツール利用(function calling / MCP / スキル) — 汎用モデルに検索・コード実行・API操作などの「手順」を外付けする仕組み。ローカル小型は苦手
参考資料(出典)
- https://openrouter.ai/docs/quickstart
- https://openrouter.ai/docs/faq
- https://openrouter.ai/docs/features/privacy-and-logging
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